【読めばナルホド!大事なポイントが分かる東洋医学】の[基礎編]第六章:『証(虚実・寒熱・表裏)』について、わかりやすくお話いたします。
前回、東洋医学の基本的な要素である〔血〕・〔津液〕について理解を深めていきました。
血・津液とは?
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【東洋医学】では「各個人の体質を見極め、それに合わせた療法を行えば、効果が高まる」と考えられています。
体質が分かれば、「一人ひとりに適したもの (心と体に合ったもの)」を選べるようになります。
今回は【東洋医学】における治療の指標:『証(虚実・寒熱・表裏)』について理解を深めていきましょう!
『証』とは治療の指標
まずは『証』について、お話していきます。
「この人は比較的体力が低下した人で、あの人は比較的体力があって...」
このような表現を見聞きしたことはありませんか?
これが東洋医学でいう『証』であり、“治療の指標”として定められています。
東洋医学では問診により“今の状態”を理解する際、『弁証(証を立てること)』を重要視します。
そのための“8つの指標(八綱弁証)”があり、【陰陽】を中心として、【虚実】・【寒熱】・【表裏】の証を立てていきます。
『証』を分かりやすく言うと...
【証】各個人の「体質」・「見た目」・「起きている病態」などの特徴を総合的に捉えたもの。
一見、身体のどこかに現れた病気で、症状が同じであっても、そこだけが原因とは判断しません。
各個人のからだ全体のバランスや歪み、他の臓器(五臓六腑)が連鎖・連動して問題が生じていると考えます。
そのため、対象者の『証』を全体像で捉え、その人に適したアプローチを行います。
例えば、『証』を立てる指標の【虚実】は「虚」の状態を『虚証』、「実」の状態を『実証』とします。
また、その中間にあたる『中間証』があります。
虚証
【虚証】「正氣(しょうき)」が不足して、体力・気力などの“生命力”を消耗した状態です。
「正氣」とは、いわゆる〔氣〕のことで、〔◯天の氣〕と〔●地の氣〕から成り立ちます。
呼吸により酸素を取り入れて『肺』で作られる〔◯天の氣〕、食事により栄養を摂り入れて『脾』で作られる〔●地の氣〕。
この両方の〔氣〕を吸収することで、人は生きています。
氣とは?
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「正氣」は“生きる氣力(生命活動を担うエネルギー)”として、〔血〕・〔津液〕を体に巡らせる原動力になります。
ただ、臓器の機能低下や栄養失調、食生活の乱れ、精気の不足、ストレス、過労、久病により、「正氣」は消耗・不足します。
つまり、『虚証』とは、気力・体力、いわゆる、“生命力”を消耗しており、〔氣〕が不足した状態です。
ここで注意しておきたいのは、単に「見た目」だけで、『虚証』と判断しないことです。
例えば...
「体がやせ細っている人」でも、“元気”であるならば『虚証』ではありません。
また、比較的体力がありそうな相撲取りやレスラーなどの体格がしっかりしている人(『実証』と思われやすい人)がいます。
このような人でも、気力がなくて落ち込みやすい、胃腸が弱くて疲れやすい、めまいやふらつきが多いなど。
〔氣〕が不足して消耗した状態が見られるのであれば、『虚証』に陥っていると考えます。
「痩せていて、抵抗力が弱そうな人」が『虚証』で多いのは、全体的な傾向であることは間違っていません。
ただ、それだけで判断せず、全体の“バランス”を通じて、総合的に捉えることが大切です。
久病とは?
【かんたんチェック】虚証の特徴
『虚証』の特徴は次のとおりです。
(*よかったら、ご自身でもチェックしてみてください。)
元気が出ない
体がだるい
疲れやすい
めまいやふらつきが多い
食が細い
胃腸が弱い
風邪を引きやすい
冷え性である
落ち込みやすい
不安な気持ちになりやすい
集中力が低下している
【かんたんチェック】自分の体質を調べてみよう!
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実証
【実証】身体が“邪”に侵された状態です。
『実証』の「実」は、「邪(邪気)」を表します。
「邪」は“体に余分なもの(例:脂肪や肥満)、悪いもの(例:ウイルス)”とイメージしてください。
私たちの身体には、「恒常性(ホメオスタシス)」を保つ力が働いて、どちらかに偏りが出たら、バランスを取るようにできています。
これが生命力・免疫力でもあります。
ただ、身体の許容範囲を超えてしまうと、「邪」として身体を侵してしまい、その結果、“病”となって現れます。
『実証』は「体力充実していて、抵抗力が強そうな人」に多いですが...。
『虚証』と同様に、「見た目」で判断せず、総合的に捉えることが大切です。
外邪と内邪
【かんたんチェック】実証の特徴
『実証』の特徴は次のとおりです。
(*よかったら、ご自身でもチェックしてみてください。)
感情の起伏が激しい
怒りっぽい
のぼせやすい
鼻血が出やすい
便秘がち
太り気味・ぽっちゃりである
筋肉質である
つい食べ過ぎてしまう…
【かんたんチェック】自分の体質を調べてみよう!
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寒熱と表裏
この内容は「証」についての理解を深めたい方が読むことをおすすめします!
東洋医学では、『証』を立てるための“8つの指標(八綱弁証:【陰陽】・【虚実】・【寒熱】・【表裏】)”があります。
それらの指標の判断の際、基本的に【陰陽】・【虚実】を主にして『証』を立てることが多いです。
ただし、さらに『証』を見極める人は、【寒熱】と【表裏】という観点を見ていきます。
『証』に対する理解を深めたい方は、【寒熱】と【表裏】を見てみましょう!
寒熱
【寒熱】「病のタイプを捉える」考え方。
「寒」や「熱」の影響を受けていないか?
『寒証』と『熱証』という観点で見極めます。
寒証
【寒証】体内に「寒」が入り込んで、不調が起きている状態
つまり、許容範囲を超えた「寒」が、身体に悪さをしているということです。
このような状態になる、悪寒や頭痛、発熱、顔面の蒼白などが見られます。
身体の機能も低下しているため、免疫力が十分に働きません。
身体を温める処置を行うことが重要です。
熱証
【熱証】体内に「熱」が入り込んで、不調が起きている状態
体内の「熱」が過剰であるため、熱感だけでなく、身体に炎症が生じています。
このような状態では、顔色も赤く、のぼせており、目の充血や腫れ、口渇、脱水などが見られます。
身体にこもった余分な熱を冷まして、乾いた身体を潤す必要があります(清熱)。
漢方や薬膳などの「五性(五行に基づいた性質)」を活用して、改善を図ると良いです。
(例:体が熱っぽかったら、体を冷やす「スイカ(五性:寒)」など。これについては、[理論・応用編]第十一章:薬膳・漢方にて詳しくお話いたします。)
[理論・応用編]第十一章:薬膳・漢方
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表裏
【表裏】「病の部位や進行の程度を捉える」考え方
「病の部位」では、浅い(表)・深い(裏)、「病の進行の程度」では、初期・急性(表)・慢性(裏)を判断します。
東洋医学において、病は「表」から始まって、次第に「裏」の方へと進むと考えます。
また、「半表半裏」といって、「表」から「裏」に症状が進行する過程で、「表」と「裏」の症状が交互に見られることもあります。
表証
【表証】病の初期や急性症状が多く、症状が体表部に表れる。
頭痛や悪寒、風邪のひきはじめ、関節痛、肩こりや背中のハリ、湿疹などです。
裏証
【裏証】病が進行した慢性期で多く、症状も身体の深部・内臓全般などに表れる。
病が内臓に入り込んでいるため、腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状だけでなく、高血圧症や糖尿病なども該当します。
【まとめ】『証』を立てて、適するものを選択する
【東洋医学】における治療の指標:『証(虚実・寒熱・表裏)』について、お話いたしました。
各個人の「体質」・「見た目」・「起きている病態」などの特徴から『証』を捉えることで、その人に適した療法やアドバイスを行うことができます。
ご自身の感覚でも良いので、試しにご家族やご友人などを観察してみてください。
“100%”と見極めることは難しいかもしれませんが、次第に見る目が養われていきます。
『証』を立てて、適するものを選択していきましょう!
次回からは[理論・応用編]として、【東洋医学】において重要な説とされる『五行説』について、お話させていただきます。
五行説とは?
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今回で【読めばナルホド!大事なポイントが分かる東洋医学】の[基礎編]は終了です。
ここまでお疲れ様でした!
難しかったですか?(難しくて、理解ができなかったら、ごめんなさい。私の責任です。。。)
この内容を読んで、少しでもあなたの実生活で役に立てられたのであれば、幸いです。
【東洋医学】の理解を深めることで【西洋医学】、さらには、『現代医療』の理解も深まるだけでなく、実生活における“モノの見方(自分の判断軸:モノサシ)”が磨かれる
...と私は確信しています。
ただ、
【東洋医学】をテーマにした内容は色濃くて深い分、一気に理解しようとすると、頭が混乱してしまいます。
「本質はどこにあるのか、どのようなイメージ・言葉で捉えたら良いのか?」
少しずつ頭の中で整理していき、確認をしながら理解を深めていきましょう!
次回からは[理論・応用編]となり、東洋医学への理解をさらに深めていきます。
【東洋医学】をより身近に感じられるようになると思いますので、ぜひブックマークをしてお読みください!
〜美からなるあなたへ〜
Beauty & Being & Best
美容薬剤師 佑:Task
【読めばナルホド!大事なポイントが分かる東洋医学】
読めばナルホド!大事なポイントが分かる東洋医学
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[基礎編]
第六章:証(虚実・寒熱・表裏)(←今回はコレ!)
[理論・応用編]
第七章:五行論
第八章:五臓六腑(肝・心)
第九章:五臓六腑(脾・肺)
第十章:五臓六腑(腎・三焦)
第十一章:薬膳・漢方
[番外編]
第十二章:黄帝内経に基づく身体の変化
[理論・応用編]第七章:五行説とは?
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