こんなお悩みはありませんか?
皮膚に細菌が繁殖し過ぎると、毛穴・皮脂腺がつまってしまい、膿が溜まってしまいます(化膿)。
そういう時は、“化膿した皮膚に対する漢方薬”として『排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)』があります。
『排膿散及湯』は“漢方の抗生剤”ともいわれ、化膿性疾患の改善に役立つ漢方薬です。
その得意な作用により、皮膚や粘膜、ニキビの化膿から潰瘍、蓄膿症(副鼻腔炎)、歯槽膿漏などに使用されます。
この漢方薬は江戸時代の医師:吉益東洞(よしますとうどう)による臨床経験から創り出されました(「吉益東洞経験方」)。
皮膚が化膿していたり、蓄膿症でお悩みの方に、排膿散及湯の服用を検討する価値はあります。
今回は【漢方のチカラ】として『排膿散及湯』についてわかりやすく解説いたします。
この投稿を読めば?
- 排膿散及湯の特徴・どういう時に使えば良いのかがわかります!
- 化膿性皮膚疾患の改善目的に、排膿散及湯が選択肢となります!
- つらい副鼻腔炎や鼻炎、乳腺炎の症状が楽にしたい時の選択肢として、排膿散及湯が候補となります。
漢方データ
体質
虚・中間・実
どの体質の人にもよらず、適用可能です。副作用も少なく、とても使いやすい漢方薬であります。
適応証
【熱毒証】
「熱毒」とは、体内の熱の勢いが強く、発赤、腫脹、化膿、高熱などが起こることです。
基本的には「皮膚や粘膜(鼻腔、副鼻腔、歯肉など)の化膿性疾患を有する人」に適しています。
適応する疾患・症状
【皮膚】膿皮症
【耳鼻咽喉】急性・慢性副鼻腔炎、急性・慢性鼻炎、慢性中耳炎
【眼】麦粒腫
【歯・口腔】歯槽膿漏
【産婦人】乳腺炎
【消化器】肛門周囲腫瘍
【その他】リンパ節炎
構成生薬とその作用
【排膿作用】桔梗・甘草
【排膿・理気作用】枳実
【活血・涼血・消炎・鎮痛・鎮痙作用】芍薬
【補気健脾作用】生姜・大棗
排膿散及湯は6種類の生薬(桔梗・甘草・枳実・芍薬・生姜・大棗)を配合し、その作用を組み合わせて効果を発揮します。
主薬:桔梗と枳実による【排膿作用】で、甘草と芍薬の【消炎作用】がそれをサポートし、化膿性疾患の排膿を促進する目的で広く使用されます。
生姜と大棗は『脾(胃)』の働きを良くします。
脾は食事で摂り入れた栄養を消化吸収して「氣(●地の氣)」を作り出して補います。
また、脾は「氣」から「血」・「津液」を生成し、運化作用により全身に栄養を供給します。
特に『脾(胃)』→『肺(皮膚・大腸)』と働きを促すため(相生関係)、皮膚や鼻などの呼吸器官を含め、栄養状態を改善します。
五臓六腑(脾・肺)
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効果・効能
排膿散及湯は“漢方の抗生剤”とも呼ばれ、種々の化膿性疾患に効果が期待できます。
ポイントは次の3つ
- 発赤
- 腫脹
- 疼痛
この3つを伴った症状に対して、排膿散及湯は効果的です。
例えば、皮膚の粘膜に“できもの”が生じると、赤く腫れて痛みを伴います。
瘍(ヨウ、カサ):頭にできる腫れ物、面疔(メンチョウ):顔面にできたオデキ、膿が関わる尋常性ざ瘡(ニキビ)などは、よく効く症状であり、使用の目安になります。
注意点として、皮膚が化膿するということは、細菌が繁殖しています。
細菌が血中に移行して症状が拡散しないように、患部に触れて圧迫しないことです。
その他、副鼻腔炎や鼻炎、歯槽膿漏、乳腺炎、リンパ節炎にまで、体質を選ばずに使える排膿散及湯は活用しやすいです。
十味敗毒湯との違い
化膿性皮膚疾患に使われる漢方薬として、『十味敗毒湯』があります。
特に、尋常性ざ瘡(ニキビ)や強い蕁麻疹に対して、よく見られる処方です。
十味敗毒湯は炎症・化膿傾向のある皮膚疾患に用いられ、かゆみや炎症を取り除き、患部の腫脹を軽減します。
皮膚疾患は症状に波があり、治癒の過程でも一時的に増悪したりします。
十味敗毒湯は基本的に「湿疹」に適応され、「初期」や一時的な「増悪時」に使われ、2〜4週間を目処に効果判定します(*それにより、今後の治療方針を検討する等)。
排膿散及湯は症状の時期を選ばずに使用ができ、また、基本的に「膿皮(皮膚の化膿)」に適応されるため、十味敗毒湯と使い分けられます。
【まとめ】化膿性疾患を楽に
『排膿散及湯』は化膿性疾患の排膿を促進する目的で広く使用することができます。
皮膚や粘膜が化膿して、赤み・腫脹・疼痛症状の緩和・軽減に効果が期待できます。
体質によらず使用ができるのも大きなポイントで、とても使い勝手がよいです。
化膿性疾患でお悩みの人は、“漢方の抗生剤”とも呼ばれる排膿散及湯の服用を検討してみてはいかがでしょうか?