【読めばナルホド!大事なポイントが分かる東洋医学】の[理論・応用編]第十章:五臓六腑(腎・三焦)について、わかりやすくお話いたします。
前回、五臓六腑の〈脾(胃)〉・〈肺(皮膚・大腸)〉について理解を深めていきました。
今回は〈腎(膀胱)〉・〈三焦(体内の空間)〉について理解を深めていきましょう!
【復習】五臓六腑のポイントは何か?
『五臓六腑』を理解する上でのポイントは...
「【五臓】が整うと、【六腑】も自然と整う。」
「自ずと身体はバランスを整える」ため、個別ごとに捉えるのではなく、“つながり”を意識することが大切です。
『五行説』では、〈腎〉は「水」の性質を持つとされます。
【表】腎
〈腎〉の主な5つの作用
- 【主水】身体の老廃物で汚れた水分を集めて濾過し、再利用可能な水分を回収、再利用できない水分は膀胱から尿として排泄することで、体内の水分バランスを管理します。
- 【蔵精】人の成長や生殖機能に関わる力である「精氣」を貯蔵します。
- 【納氣】〈肺〉の深い呼吸を支え、摂り入れた〔氣〕を「精氣(エネルギー)」として補充する働きがあります。
- 【作強】〈腎〉は身体を強固にして、肉体的・精神的なストレスに抵抗します。
- 【神志のコントロール】思考、感情などの精神活動をコントロールします。
【表】〈腎(腎臓)〉は“生命力を蓄える臓腑”とされ、人の発育や成長、生殖に深く関わる。
〈腎〉は血液を濾過して尿と分離し、体内の水分代謝を調整することで、陰陽のバランスをコントロールします。
生命力を高める【陽】は〔氣(エネルギー)〕として、〈腎〉の【納氣作用】により「精氣(腎氣・腎陽氣)」となります。
この蓄えた「精氣(腎陽氣)」は、冷えや寒気に呼応して、身体を温めるように働きます。
ただし、〈腎〉の機能が低下した状態では、十分な「精氣(腎陽氣)」が蓄えられず、からだ全体の【陽】が不足し、【陽虚】となります。
東洋医学では〈腎〉は“生命力を蓄える臓腑”とされるくらい重要視されます。
〈腎〉の機能低下による【陽】の不足は、身体全体の「精氣」が不足してしまうため、身体全体の機能から気力、体力などを含め、生命力までもが低下してしまいます。
また、東洋医学において、感情についてコントロール(「志」)しているのは、精神活動を担う〈心〉ではなく〈腎〉です。
(*「水」の性質を持つ〈腎〉は、「火」の性質を持つ〈心〉の過剰な働きを抑える相克関係であることからも、イメージできるかと思います。)
〈腎〉の働きが落ちると、感情の抑制が効かなくなり、不安や恐怖といった“負の感情”が強く出るようになります。
さらに、〈腎〉は身体の中の堅い物(骨・髄・脳・歯)を強固にして、肉体的・精神的なストレスへの抵抗力を高めます。
生命力あふれ、心身が健全であるためにも、〈腎〉は重要な臓腑です。
副腎疲労とストレス
腎精
“生命力を蓄える臓腑”である〈腎〉は、2つの「精氣(先天の精・後天の精)」を丹田(おへその5cmくらい下)に蓄えています。
「先天の精」とは、両親から受け継いだ〔氣〕で、人の成長、発育、生殖に必要なエネルギーです。
これが失くなった時に「死(寿命)」を迎えるとされます。
「後天の精」とは、生まれてから〈脾〉・〈肺〉で作られる〔氣〕で、生命活動をするために必要なエネルギーです。
活動することで消耗され、減っていくため、食事をしっかり摂るなどの栄養補給をすることが大事です。
ポイントは...
ということです。
〈腎〉は成熟後(体が出来上がった後)、年齢を重ねるにしたがって働きが弱まっていきます。
(*西洋医学でいう、腎機能の数値が悪くなるのと同じように、腎機能は低下します。)
また、〔氣〕を使いすぎることで、「先天の精」も使ってしまうため、“燃え尽き症候群”にもつながってしまい、寿命が縮まってしまいます。
「後天の精」を補いつつ、「先天の精」への借金を少しずつ返していくことで、改善していくと良いとされます。
腎と外見
〈腎〉は老化にも関係していると述べましたが...
【東洋医学】では“目に見える外見”で〈腎〉を捉えます。
例えば、姿勢が悪い(骨)、虫歯になる(歯)、思考力が低下する(脳)、難聴になる(耳)、抜け毛・白髪が増える(髪)、トイレが近い・失禁する(肛門・尿道)など、腎の働き(「精気」)が弱まることによる影響を受けます。
また、東洋医学では「髪は余った〔血〕から作られる」と考えられています。
“腎の華は髪にある”とされ、髪には〈腎(精氣)〉の状態が現れます。
『黄帝内経(こうていだいけい)』という東洋医学の教科書とも言うべき書物があります。
そこには、〈腎(精氣)〉から見た身体の年齢による変化が記されています。
こちらについては、[番外編]黄帝内経に基づく身体の変化」にて詳しくお話させていただきます。
ここでは、「〈腎〉は見た目にも出る」と捉えておきましょう。
五臓と姿勢の関係
【裏】膀胱
【裏】〈膀胱〉は、体内を巡った水分を取り込んで、不要なものを「尿」として排泄する。
尿は全て血液から作られ、〈腎〉によって濾過されます。
そして、濾過された尿は尿管を通り、〈膀胱〉へと送られて排泄されます。
尿の再吸収
三焦
〈三焦〉はその他の臓腑を包み、〔氣〕・〔津液〕が巡る通路として、五臓六腑を通じ合わせる。
〈三焦(体内の空間)〉は“目に見えない臓腑”です。
【六腑】に含まれるそれぞれの三焦は、その他の臓腑を包み、【五臓】と通じ合わせます。
〔氣〕・〔津液〕が巡る通路としての役割を果たし、よどみなく流れ、体内への出入を支えます。
「三」というのは、身体は「天・地・人」の3つの部位に分けられ、それら(3つの焦点)をつなげていることから〈三焦〉と称します。
〈三焦〉は次の3つあります。
〈三焦〉とは?
- 【上焦】横隔膜から上、心臓、肺
- 【中焦】横隔膜から臍、脾、胃
- 【下焦】臍から下、腎、膀胱、小腸、大腸
東洋医学とリンパ
【まとめ】〈腎〉と〈三焦〉の理解を深めよう!
五臓六腑における〈腎(膀胱)〉・〈三焦(体内の空間)〉について、お話いたしました。
【腎(膀胱)】
【表】〈腎(腎臓)〉は“生命力を蓄える臓腑”とされ、人の発育や成長、生殖に深く関わる。
【裏】〈膀胱〉は、体内を巡った水分を取り込んで、不要なものを「尿」として排泄する。
【三焦】
〈三焦〉はその他の臓腑を包み、〔氣〕・〔津液〕が巡る通路として、五臓六腑を通じ合わせる。。
〈腎〉は姿勢から髪、さらには、脳機能まで、“目に見える外見”としても出てきて、老化現象にも関係しています。
生命力あふれ、心身が健全であるためにも、〈腎〉は重要な臓腑です。
また、〈腎(腎臓)〉が整うと、〈肝(胆)〉』も良くなるとされます。
「水」のような性質を持つ〈腎〉、「木」のような性質を持つ〈肝〉。
水を与えることで、木が生長するのです。
次回は[理論・応用編]第十一章:薬膳・漢方について、お話いたします。
今回はここまで!
今回で、東洋医学における『五臓六腑』のお話は以上となります。
【東洋医学】における『五臓六腑』は、【西洋医学】の解剖学的な観点とは異なります。
ただ、その違いだけでなく、「どこが、どうつながっているのか」。
“つながり”を意識して捉えることで、西洋医学や現代医療における、自分の判断軸:モノサシの幅が広がっていきます。
内容も色濃くて、とても深いのですが、ぜひ東洋医学における『五臓六腑』の見方をつかんでいただけたらと考えます。
繰り返しますが、『五臓六腑』を理解する上でのポイントは...
「【五臓】が整うと、【六腑】も自然と整う。」
「自ずと身体はバランスを整える」ため、個別ごとに捉えるのではなく、“つながり”を意識することが大切です。
次回の[理論・応用編]第十一章:薬膳・漢方のお話も同様です。
今回はここまで!
【東洋医学】をテーマにした内容は色濃くて深い分、一気に理解しようとすると、頭が混乱してしまいます。
「本質はどこにあるのか、どのようなイメージ・言葉で捉えたら良いのか?」
少しずつ頭の中で整理していき、確認をしながら理解を深めていきましょう!
〜美からなるあなたへ〜
Beauty & Being & Best
美容薬剤師 佑:Task
【読めばナルホド!大事なポイントが分かる東洋医学】
[基礎編]
[理論・応用編]
第十章:五臓六腑(腎・三焦)(←今回はコレ!)
第十一章:薬膳・漢方
[番外編]
第十二章:黄帝内経に基づく身体の変化