こんな疑問はありませんか?
シワやたるみ、肌荒れ、シミ、ニキビ...女性の肌を悩ませるだけでなく、気持ちの面でも落ち込んでしまうこともあります。
ここ最近、シワを改善するという「レチノール」をご存知でしょうか?
「レチノール」は【ビタミンA】のことです。
【ビタミンA】は食事による栄養素として古くから知られていますが、近年は「レチノール」を配合した化粧品もたくさん販売されています。
なぜこんなにも「レチノール」が注目されるのでしょうか?
正直なところ...
「『レチノール』って、実際どう良いの?」
って思いませんか?
そこで【美容成分解析】として、今話題の注目成分である『レチノール』について、わかりやすく解説いたします。
この投稿を読むメリット
- 「レチノール」とは何かがわかる!
- 「レチノール」の期待できる効果がわかる!
- 「レチノール』を配合した化粧品・医薬部外品・医薬品の適正使用ができるようになる!
ビタミンAとは?
【ビタミンA】は肌の健康に欠かせない成分で、もともとは私たちの体に貯蔵されているものです。
主に肝臓(約90%)に貯蔵されており、タンパク質と結合して、血液を通して各組織へ必要分を供給します。
【ビタミンA】は視覚機能、上皮細胞の機能維持、細胞の増殖と分化の制御、粘膜を丈夫にして免疫力を保つなどに関与しています。
肌に備わった【ビタミンA】は、表皮に厚みを持たせたり、紫外線を吸収して皮膚へのダメージを軽減し、皮膚を健全な状態へ整えます。
そのため、今日では化粧品や医薬品、皮膚科、美容領域においても、広く応用されています。
【ビタミンA】は健康的な肌を保つためにも重要な栄養素です。
レチノイド
化粧品に配合される【ビタミンA】を調べると、「レチノール」や「レチナール」、「レチノイン酸」などの用語が出てきて、混乱することはありませんか?
そこで、スッキリと理解していただけるように、図で整理してみました。
「レチノール(【ビタミンA】)」は大まかに言うと、“レチノイド”の一種です。
“レチノイド”というのは“ビタミンA類全般”を指し、「レチノール」・「レチナール」・「レチノイン酸」なども含まれます。
“レチノイド”には約2,000種類以上も存在し、広義には【ビタミンA】を“レチノイド類の総称”とされています。
もっと極端にわかりやすく言うと、「どれも【ビタミンA】である」ということです。
「レチノール」は医薬部外品の成分として「シワ改善効果がある」と、2017年に厚生労働省から認可されました。
化粧品では「レチノール」と「パルミチン酸レチノール」に「シワ改善作用」の効能表示が承認されています。
そのため、【ビタミンA】を配合した製品の開発に各メーカーが尽力しています。
純粋レチノールとは?
レチノールとレチニルエステル
「パルミチン酸レチノール」・「プロピオン酸レチノール」・「酢酸レチノール」には高級脂肪酸が付与されて、安定性の高いレチノールのことで、『レチニルエステル(レチノール誘導体)』とよびます。
(*「誘導体」とは、安定性や浸透性を高めるために、【ビタミンA】の構造の一部を変化させたものです)。
肌に存在する【ビタミンA】の約90%は「レチニルエステル」であり、主に「パルミチン酸レチノール」で占められています。
【ビタミンA】の生理活性は「レチノール」、最終的には「レチノイン酸」にならないと発揮されません【参考文献】。
「パルミチン酸レチノール」は加水分解されることで、「レチノール」と変化して、その効果が期待されます。
化粧品に配合される【ビタミンA】の多くは「シワ改善作用」の効能表示ができる「パルミチン酸レチノール」が配合されています。
「パルミチン酸レチノール」は肌に馴染みやすく、刺激も少ないので、毎日のスキンケアとして適しているからです。
攻めと守りのレチノール
レチノールとレチノイン酸
「レチノール」は表皮の基底層に運ばれると、酵素により代謝されて「レチナール」となり、最終的には「レチノイン酸」へと変化します。
「レチノール⇔レチナール」の反応は可逆的で、「レチナール」に変化しても「レチノール」に戻ることもあります。
しかし、「レチナール⇒レチノイン酸」の反応は不可逆的で、レチノイン酸に変化すると元には戻りません。
「レチノイン酸」の生理活性は「レチノール」の約50〜100倍程度、肌への効果は「レチノール」の約10倍程度と考えられています。
「レチノール」は化粧品・医薬部外品に配合されますが、「レチノイン酸」はその作用の強さと副作用の懸念から治療目的として医薬品に使用されます。
また、化粧品・医薬部外品に配合される「レチノール」は、重量換算約0.04%までしか認められていません。
その一方で、治療目的に使う医薬品や海外の製品などでは0.05%〜2%と高濃度のものもあります。
また、“ビタミンA類全般”は非常に不安定な成分であり、熱や空気、光によって容易に失活します。
そのため、酸素や光に触れないような容器を開発したり、マイクロカプセル化、冷暗所で保管、抗酸化作用がある成分(例:白金ナノコロイド、トコフェロール(【ビタミンE】))を配合する等で品質を保つ工夫がされます。
医薬品の「トレチノイン」
期待できる効果
【表皮における作用】
- 【シミ・黒ずみ】表皮細胞を活性化して、ターンオーバーを促進することで、表皮のメラニンを排出及び古い角質を剥がして毛穴のつまりや黒ずみを改善します。
- 【肌荒れ】表皮のケラチノサイトの増殖を刺激し、表皮を厚くして肌理を整えます。
- 【小ジワ】表皮におけるヒアルロン酸の産生促進により角質層の水分を保持して、肌にうるおいと滑らかさをキープし、乾燥による小ジワを目立たなくします。
- 【ニキビ】表皮角化細胞の分化を抑制とターンオーバーの促進により毛穴のつまりを改善します。また、抗炎症作用もあり、ニキビをできにくくします。
【真皮における作用】
- 【ニキビ】皮脂腺からの皮脂の分泌を抑制します。
- 【シワ・たるみ】真皮の線維芽細胞を刺激して、コラーゲン・エラスチンの産生を促進します。
- 【血色を良くする】真皮乳頭層の血管新生を促進し、表皮細胞への酸素や栄養供給を改善して、血色が良くなって顔色が明るくなります。
【ビタミンA】の効果を端的にまとめると、「肌が自分で良くなる力を引き出すための存在」です。
上記の作用により、肌が本来持っているターンオーバーやコラーゲン・エラスチンの産生、皮脂の分泌量の調整などの機能を回復・正常化させます。
ここで注意していただきたいのは、【表皮における作用】・【真皮における作用】、期待できる効果は製品(化粧品・医薬部外品・医薬品)によって異なるということです。
どういうことかといいますと、基本的には「化粧品は肌の奥にまで浸透しません」。
表皮(角質層)には外部からの刺激や異物の侵入を防ぐ「バリア機能」があります。
化粧品レベルを塗るだけでは、表皮よりも奥深くにある真皮にまでは成分が届きません。
つまり、「レチノール」における【真皮における作用】というのは「医療機器を使う」または「作用が強い医薬部外品・医薬品」を使った場合などに限られます。
化粧品に配合される「レチノール」は、主に【表皮における作用】となります。
(*化粧品でも濃度の高い海外製の製品などは、真皮における作用を期待できるものもあります。)
この点、非常に紛らわしく、「優良誤認」を与えるおそれのある表現も多いので、説明させていただきました。
パルミチン酸レチノールと抗シワ作用
多くの化粧品に配合される【ビタミンA】は「レチニルエステル」で、安定性も高くて低刺激でなじみやすい「パルミチン酸レチノール」が汎用されます。
先にも述べましたが、【ビタミンA】の生理活性は「レチノイン酸」にならないと発揮されません。
「パルミチン酸レチノール」は加水分解されることで「レチノール」へと変化し、酵素反応により「レチナール」、「レチノイン酸」へ変換されます。
しかし、実際のところ、これらの反応についてはどれほど変換されるのか、どれほど浸透するのかは、個人差もあると考えられ、現在のところ不明・未知数でもあります。
これはもともと肌に約90%も存在する「パルミチン酸レチノール」についても同じことが言えます。
また、繰り返しますが、化粧品は基本的に「表皮」にまでしか届きません。
そのため、期待できる効果は主に【表皮における作用】となります。
化粧品に配合された「パルミチン酸レチノール」を塗ることで、表皮の角質層での「レチノール」の濃度が上がります。
その結果、表皮にある細胞を活性化して、ターンオーバーを促進することで、肌荒れを改善。
表皮におけるヒアルロン酸の産生促進による皮膚の水分量の増加と柔軟性を与えます。
つまり、「レチノールがシワに良い」とされますが、真実は「肌にうるおいとなめらかさを与え、乾燥による小ジワを目立たなくする」ということがメインとなります。
化粧品の効能効果の範囲
レチノイド反応とは?
よく「【ビタミンA】を塗ると赤くなる」と言われますが、これはどういうことでしょうか?
これは『レチノイン反応(別名:A反応)』とよばれるもので、塗った部位に「赤み」や「かぶれ」、「熱感」、「ピリピリ感」、「皮むけ」が見られるようになります。
「レチノール」を塗ることで、肌の中の「レチノイド酸」の濃度が上がり、レチノイド受容体や処理する酵素が追い付かなくなると、免疫細胞が活発化して、炎症物質を放出します。
【ビタミンA】を塗った部分のターンオーバーが促進されるため、一時的に皮膚が薄くなります。
この結果、皮膚に赤みなどの症状が見られるようになるわけです。
この反応は使い始めから2ヶ月以内に起こることが最も多く、肌が薄くなり敏感になることによるものです。
ポイントは「そこまでひどく過敏に反応していたり、使用していて気にならなければ、少し様子を見て使い続けてみてください」。
(*ただし、このような反応が見られた時は、1日1回夜だけの使用にしてください【後述】。)
しばらくすると落ち着いてきて、肌の状態が改善されていきます。
また、『レチノイン反応(別名:A反応)』は「レチノイド酸」の濃度が高いほど強く見られます【参考文献】。
特に個人輸入で入手する化粧品や医薬部外品、医薬品は濃度が高いものが多いので、使用には注意が必要です。
初めてレチノール配合の化粧品を使う方は「濃度が低いもの」から使用していくと良いです。
「医薬部外品」とは?
いつ使うのが良い?【適正使用】
結論から言います。
-
「レチニルエステル(パルミチン酸レチノールなど)」が配合された化粧品は「1日2回 朝・夜 を目安にして、いつ使ってもOK!ただし、紫外線対策もしっかりとすること!」(*ただし、『レチノイド反応』が見られた時は、1日1回・夜(お風呂上がりまたは寝る前)に使用して様子を見る)
- 「レチノール」や「レチノイン酸」が配合された医薬部外品・医薬品は「1日1回 夜(お風呂上がりまたは寝る前)」
この2点を覚えておいてください。
日焼け止め効果がある?
「パルミチン酸レチノールにはSPF20程度の日焼け止め効果がある」とされ、夏場などの紫外線の強い時期に使うことを推奨する意見があります。
その逆に、「【ビタミンA】は光(紫外線)に弱く、分解されると活性酸素であるフリーラジカルが発生して肌に良くないから、すべてのレチノール配合の化粧品は夜だけに使うべき」という考えもあります。
これはどちらもごもっともな意見でもあり、事実でもあります。
「紫外線防止にパルミチン酸レチノールが効果あり」という説は、2003年に学会で発表された論文がもととなっています【参考文献】。
人の皮膚を使用したエビデンスレベルの高い研究で「UV-Bの照射に対して2%のパルミチン酸レチノールの溶液がSPF20の日焼け止めと同等近い紫外線への紅斑抑制効果が認められた」=「【ビタミンA】はUV-Bを吸収することで皮膚に光保護作用を発揮する」と報告されました。
この研究発表により、「パルミチン酸レチノールを日焼け止めに配合しよう!」と多くのメーカーが開発を進めました。
ただ、その後、「ビタミンA類は紫外線により分解し、フリーラジカルを発生して、肌のDNAにダメージを与える」と研究報告も相次いでされました【参考文献】。
ここで着目したいのは「UV-AとUV-Bがごっちゃになっている」ということです。
UV-A・UV-B・UV-Cについて簡単にまとめてみました。
-
【UV-A】(サンケア指数:PA+ 〜 PA++++)
波長が長くてエネルギーは弱いものの、皮膚への透過度は大きい紫外線。真皮にまで到達し、長い時間をかけて線維芽細胞にダメージを与えて、シワやたるみの原因になります。雲やガラスを通り抜け、日常生活でも浴びることから「生活紫外線」ともよばれます。 - 【UV-B】(サンケア指数:SPF)
UV-Aよりも波長が短くてエネルギーは強いものの、皮膚への透過度は小さい紫外線。主に表皮に作用して、メラニンの生成を促進し、日焼け(肌の炎症)やシミの原因になります。雲やガラスは通り抜けず、外での活動で浴びることから「レジャー紫外線」ともよばれます。 - 【UV-C】
UV-A、UV-Bよりも波長が短くてエネルギーが強力な紫外線。しかし、オゾン層に吸収されるため、私たちに影響はありません。
「パルミチン酸レチノール」は「SPF20」、つまり、「UV-B」に対しての防御効果が塗らなかった時の約20倍程度あるということです。
実際のところ、研究では「UV-A(PA)」に対する“防御”の視点で見ているものが多いです。
「パルミチン酸レチノール」が紫外線(UV-A)に対して不安定であることは確かです。
ただ、人の肌にはもともと化粧品に配合されるものと同じ、「レチニルエステル」や「ビタミンA類」が存在しています。
「「パルミチン酸レチノール」が存在するからこそ、紫外線を吸収して守られている」という観点を持つことも重要です。
まとめますと、「パルミチン酸レチノール」を塗ったからといって、紫外線を浴びることによる肌へのダメージはどちらにせよある。
だからこそ、「紫外線対策は重要である」ということです。
塗った後に肌がピリピリと過敏に反応することがなければ、「パルミチン酸レチノール」が配合された化粧品は「1日2回 朝・夜 を目安にして、いつ使ってもOK!ただし、紫外線対策もしっかりとすること!」というのが結論です。
*『レチノイド反応』が見られたら、1日1回・夜(お風呂上がりまたは寝る前)に使用して様子を見ましょう。
成分をチェックする目を持とう!
医薬部外品・医薬品のビタミンA
「レチノール」や「レチノイン酸」が配合された医薬部外品・医薬品は「1日1回・夜(お風呂上がりまたは寝る前)」に使用してください。
これらは生理活性が強く、肌への効果も高いです。
ただし、その分、肌への影響も出やすく、尚且、不安定な成分でもあります。
「レチノイン酸」である「トレチノイン」には光老化からの保護や改善作用もありますが、光感受性も高いため、紫外線による有害作用が出やすくなります【参考文献】。
「1日1回・夜(お風呂上がりまたは寝る前)」の使用を推奨します。
「レチノール」の長期使用による安全性
まとめ
「レチノール」について、まとめです。
- 「レチノール」・「レチナール」・「レチノイン酸」は「レチノイド」と呼ばれ、広義には【ビタミンA】は“レチノイド類の総称”である。
- 「レチノール」⇔「レチナール」⇒「レチノイン酸」と変化し、主な生理作用を発揮するのは「レチノイン酸」である。
- 高級脂肪酸(パルミチン酸など)が付与されて、安定性の高いレチノールのことを「レチニルエステル(レチノール誘導体)」と呼ぶ。
- 肌にはもともと【ビタミンA】が存在していて、そのうち約90%は「パルミチン酸レチノール」である。
- 化粧品に配合される【ビタミンA】は主に「パルミチン酸レチノール」で、安定性が高く、低刺激で肌になじみやすいため、毎日のスキンケアに適している。
- 「パルミチン酸レチノール」はSPF20程度のサンケアが期待できるが、紫外線対策もしっかりとする必要がある。
-
「レチニルエステル(パルミチン酸レチノールなど)」が配合された化粧品は「1日2回 朝・夜 を目安にして、いつ使ってもOK!ただし、紫外線対策もしっかりとすること!」
- 「レチノール」や「レチノイン酸」が配合された医薬部外品・医薬品は「1日1回 夜(お風呂上がりまたは寝る前)」
製品を選ぶ際のポイント
最後に化粧品などの製品を選ぶ際の『3つのポイント』を抑えておきましょう。
3つのポイント
- 「自分にとって何が良くて、何が大事なのか?」を考えてみる。
- 「長い目で見て、どういう結果を得たいのか」をイメージしてみる。
- 「自分が納得した上で、続けられそうなもの」を選ぶ。
もちろん、その時の気分やノリ・勢いで選ぶことも一つの考え方であり、その判断は尊重すべきです。
ただ、あなた本来の美と魅力を発揮するためにも、「一人の消費者として賢くなり、選択していくこと」が大切です。
この『3つのポイント』は何事においても大切にしていただけたら幸いです。